崖っぷち

毎日の生活は闘いになった。
(中略)
それはまるで、ぱっくり開いた暗い穴に飲み込まれないように、
崖っぷちで必死にしがみついているような感じだ。

以前のようにパッパッと自動的にできることは
何もなくなってしまった。
あらゆることが、初めて習うことのように感じた。

料理をすれば焦がしてしまうし、
アイロンをかけっぱなしにして忘れてしまうし、
洗濯物は以前のように分けて洗えないし、
車の運転が怖くなった。

みんなから、
その質問は前にもしたでしょう、と言われてしまうけれど、
自分では記憶がない。

過去は空白になってしまい、奇妙な感じがして怖い。
それなのにまわりの人は私にイライラしている。

引用:クリスティーン・ブライデン著
馬籠久美子・桧垣陽子訳
『私は私になっていく』クリエイツかもがわ
p.123〜p.124、2004

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