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介護体験談

呆け老人をかかえる家族の会 三重県支部版
(2004年6月第8号)より

母の介護を通して学んだ事

津市 中道和久
(津医療生協在宅介護支援センター)

 99年5月から在宅介護支援センターの相談員です。2000年から4月からはケアマネージャーもやっています。お年寄りやその家族、介護者の方と一緒に在宅生活や介護についての相談を仲間の相談員やケアマネージャーと知恵を絞り経験をもとに、少しでも役に立てればと思って日々を送っています。

 ところで、私の母が痴呆ではないか、と思い始めたのは80才の頃、今から9年前のことです。夫と義母の死をあいついで迎えた母は、かなりひどい鬱状態が続いていました。一人暮らしをしていたのですが、10年前に私たちの所に来て同居を始めました。同居して半年ぐらい経った頃から(私達は二人とも働きに出ており、子ども達も学校へいくので日中は一人の生活でした。)妻に「どこへ行くの?」「いつ帰るの?」と繰り返し繰り返し聞くようになり、紙に行き先を書いて出かけたりしました。

 そして、来るはずもない人が訪ねてきたと言ったり、いるはずもない犬が吠えていると言ったり等の言動がありました。同居して1年ほどで転居したのですが、その頃から症状は急速に進行したように思います。物忘れ外来では、「アルツハイマー型の疑陽性」との診断でした。

 一人の時に1日に何度も銀行へ電話をかけたり部屋の中を行ったり来たりしたり、お風呂になかなか入らなくなったり、重ね着をしたり、ついには着物やシーツを破ったり、葉っぱや化粧水まで口に入れるようになり、排泄物を部屋中に散らかして口の周囲にもついていることがあったり・・・

 どう対応して良いかわからず「朝起きるのが怖い」と思う毎日でした。私も妻も、身も心もクタクタで葛藤・緊張は最高に達していました。何度言っても伝わらず、何も言ってくれない。それで行動だけはする。「うつ」と「そう」を繰り返し、痴呆は進む。「怒ったらあかん」「相手の気持ちを受け入れる事」と頭では理解していても、母と向き合うと、そんな気持ちは一瞬にして吹き飛んでしまう毎日でした。この時、一番安心して母の事・介護の事を話せたのが家族の会でした。「ここで怒る介護はダメ」「本人が一番苦しんでいる」「本人の人権を守ること」など大切な事を学ぶとともに、ストレスのはけ口であり、「ほっ」とできる場でした。また、介護保険が始まる前でしたから、月の半日はショートステイを利用し、残りの毎日はデイサービスを利用することができました。(今なら介護度や限度額や一定負担などいろいろ考える事が多くありますが)。そして、怒ったらあかんあかんと思いながらも、つい顔がひきつり、声が大きくなり「切れる寸前」と妻に声をかけられ、かろうじて冷静になるという日々のくり返しでした。

 そんなある日待ちに待った報徳園への入所が決まりました。しかし、あんなに待っていたのに、入所が決まった日から、不安やとまどい、本当にこれで良いのかと悩める日が続き身体をこわしてしまいました。夢にまで見た入所だったのに、いざとなると、なかなか決断できませんでした。8年前のことです。しかし、今ふり返ってみると、母の入所は本人にとって本当によかったと思っています。何故あんなに悩んだのか、不思議でもあります。

 そしてその際他にもふり返ってみると、
(1) 施設への入所は(その人に合ったところ、必要な時間に応じて)何よりも本人の為である事。
(2) 診断や治療とともに、介護についても一日も早くプロ(専門家)の手を借りること。
(3) 家族だけの介護は限界があり、本人にとってはもちろん、家族にとっても決していい状態にはならない事。(頑張らない介護が大切)
(4) 家族がストレスを貯めない為に家族の会など、経験者や専門家が貴重な役割を果たせる事
こんな事になろうかと思います。

 困難のまっただ中では「何で自分だけが・・・」と思っていたのに、今では母の介護を経験したおかげで少しは相談の事、理解や共感がひろがるのかも・・・と思っています。今後もこうした経験が少しでも役に立てばと思っています。

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