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介護体験談

呆け老人をかかえる家族の会 埼玉県支部版
ふれあい(2003年8月25日 95号)より

花嫁のお父さん「ありがとう」

埼玉県 T

娘の挙式当日、夫は入院中の八王子の病院から、寝台タクシーで式場へ向かいました。

心配していた車中の排尿は安楽尿器を使って上手にできたので、ひとまず安心しました。到着して間もなく親族紹介が始まり、新婦の紹介になったとき、綿帽子姿で花嫁になった娘の側に、車椅子だけれども父親として凛と座っている姿は、胸がふるえるような思いでした。記念写真を撮るとき、驚いたことに花嫁のそばに座った夫はカメラのほうにしっかりと視線を向けていました。その姿には娘も感動していました。

披露宴では好物のお赤飯、ローストビーフが美味しいと、肉を切ってもらうと自分で箸を使ってほとんど食べていました。そこへドレス姿でキャンドルサービスにまわってきた娘の姿は、わかっていたようです。

娘の結婚式に入院中の夫とともに出席しようと決心してから、混乱状態が進み、夜間眠れなくなり失禁が始まったとき、更にほとんど立つことができなくなったときには、不安で参列はとても無理だろうと迷い、決心がゆらぐことが度々ありました。しかし、病棟責任者の方から「家族と一緒の行動は意外と大丈夫ですよ」と励まされ、その言葉と夫の可能性を信じて、とにかく私が「どんと腹を据えていなければ」と思い直して準備を進めてきました。

結局夫は式の途中で一回廊下に出て休息しただけで、最後に花束を贈られるまで、車椅子に座って式場にいることができました。

夫が結婚式に出席できたことは、娘の願いが叶えられただけではなく、家族一同が一生を通して悔いを残さない大切な思い出となりました。

*今回の埼玉県Tさんの介護体験談は、以前に掲載した体験談「病院で娘の結納を無事終えました」の、その後のお話です。ご主人様は、ご家族の努力が実り、アルツハイマー病を患いながらも「花嫁の父」という大役を果たされました。
ご家族の皆様、本当におめでとうございます。
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