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介護体験談

呆け老人をかかえる家族の会 京都府支部版
家族の会京都支部だより(2003年2月25日 240号)より

お年寄りのお話を聞くのが楽しくて

ホームヘルパー T.T

1.ヘルパーの仕事は楽しい

私がヘルパーの仕事に出会ったのは平成9年の春で間もなく6年目を迎えます。今でこそヘルパーの仕事も認知されてきたように思いますが、新人の頃は「ヘルパーって何するの?」とか、「まだ若いのに(当時29才)そんな汚い仕事せんでもいいやん」と言われたりしました。年寄りの世話イコール下の世話と思う人が沢山おられたと思います。ところが実際に仕事を始めたら、殆どが掃除や洗濯、買い物が多く、下の世話はありませんでした。

戸惑うこともありましたが、毎日が楽しくて「知ったふりをせず、わからなければ必ず聞く」というのをモットーに、のんびりマイペースで今までやってきたのが良かったのか、やめたいなと思ったことはありません。

結婚するまで同居していた祖母や母方の祖母にも大事にしてもらい、可愛がってもらって大きくなったからか、お年寄りが大好きです。お年寄りが持つ独特の“間”というか、スローな感じがとても心地よいのです。

お年寄りと一口に言っても、私が受け持っている人は67才から94才まで、全て女性です。

67才の方は私の母と同年代なので、2人で歩いていると「仲が良いですね、親子ですか?」と間違われることがあります。

2.若くてキラキラした時代

また、94才のおばあちゃんは私と60才違いの申年、元幼稚園の先生で折り紙がとても上手。私達の子供達(8才、4才)の写真を見せたとたんに先生だった頃の顔に戻られて「子供は可愛いね、きれいな目をしているね。」といつも言われます。

花街のお茶屋の女将さんだったKさんは、今でこそ普通のおばあちゃんですが、昔の写真を見せてもらうとピシッと着物姿が決まっています。背筋を伸ばし、ほほえむ姿はとても素敵です。皆さんの若かりし日の話を聞くのは本当に楽しいものです。67才の方以外、殆どの方が痴呆の症状があり、普通の会話すら出来ない人もいます。「今日は寒いからおでんを炊こうか?」という私の問いかけに「ええ、もう桜が咲いたん?」と言われる方、私が行くと「今まであった財布が、あんたの顔見たとたんに無い」と言われ、毎回パニックになってしまう方など、毎日がバラエティーに富み、一日として同じ日がないから、私自身も訪問するのがとても楽しみ(恐怖?)なのです。

みなさん1年以上のおつき合い、長い人では3年近い人もいるので、3年前と今とでは「ずいぶん痴呆が進んだなぁ」と悲しくなることがあります。そんな人でも、昔話になると目が輝き、いつもは言えないような難しい言葉もすらすら出てきたりで、こちらがびっくりするほどです。そんな時にいつも思うのは、「今は呆けてしまったけど、この人にも若くてキラキラした時代があったんだなぁ」ということです。

3.誤解

痴呆に理解のない人は「呆けたらしまい」と思われるのですが、呆けても相手の話し方とか、態度とか、その場の空気で伝わるものです。亡き祖母も私と母が話していたら「何か内緒で言うてんのか?」と聞かれたりしましたから。

年配の方は「今の若い者は・・・」とよく言われますが、痴呆の人を差別する人って、案外お年寄りが多いように思うのは私だけでしょうか?「あそこのおじいさん呆けたはんねん」「あんなふうに私はならへん」とかよく聞くのですが、以前私の受け持っていたMさんもそんな中の一人でした。

アパートで一人暮らしをしているMさん、お風呂がないので、ケアマネさんや私がデイケア、デイサービスを勧めたのですが、「呆けた年寄りが行くとこ。自分はまだ行きたくない」となかなかうんと言われませんでした。でもある時、腰痛のため、何日も動けず、風呂にも入れずという日が続き、これではかなわないということで、嫌々でしたが、近くのできたばかりのデイケアセンターへ週2回通所されることになりました。

その後、「デイケアセンターの職員さんにとても良くしてもらって、もっと早く行けば良かった。あんたにもいろいろ聞いていたのになぁ。」と喜ばれていました。今ではすっかり慣れて、お友達も出来たそうです。このMさんのようにデイケアやデイサービスを誤解されている人も、お年寄りの中におられますが、慣れたら「もう一回増やして欲しい」「もっと行きたい」と言われる方が殆どです。

ただ時々ですが、「前から来ている人に意地悪された」とか職員さんが忙しくてゆっくり話せない」「知らん顔された」という声を聞きます。これは私にも言えることで、時間内にしなくてはいけないことがたくさんあると、つい「ちょっと待ってて」「すぐ行くし」と言ってしまうことがあります。また、人間同士“合う、合わない”ということがありますので、どちらが良い、悪いとは言えませんが、誰に対しても平等にお世話するって、本当にとても難しいなと実感しています。

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