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介護体験談呆け老人をかかえる家族の会 「ぽーれ ぽーれ」長崎県支部報
「ひまわり」(2002年4月25日 260号号)より 「春の嵐が吹き荒れる」近藤 悦子
今年の春は、例年に比べて桜の開花が早い。いつもなら4月上旬に予定される“お花見”も三月に繰り上げて行っていると聞く。ところで、春と浮かれてはいられないのが、我が家の現実・・・「木の芽時」は、寒暖の差が大きく陽気が不順で体調を崩しやすい時期と言われるとおり、例年のごとく父の頭の中は「春の嵐」が吹き荒れた。年末と2〜3月には必ずと言っていいほど事を起こすので用心してはいたのだが・・・今年は予想以上に大変だった。 まず見当識。ここはどこ?自宅なのにどこかの宿に泊まっていると思い込んでいる。「家に帰らなければ・・・荷物を送らなければ・・・」とタンスの中身を引っ張りだして荷造りをする。不眠・せん妄・妄想と次から次に症状が現れて、父の言動に振り回される日々が続く。しかし、幸いなことにデイ・サービスには出掛けて行ってくれた。迎えに来て下さる職員の方には、いつも通り愛想が良いのが不思議だ。朝から、あんなに“変”だったのに、きっとデイ・サービスの場では普通にしていたと推測される。それと主人に対しては、やはり他人と思うのか柔順である。私は、親だと思うから腹も立ち、父も娘と思うから依存し我を通す。 ある朝、父の部屋をのぞくと・・・目が点になるほど驚いた!タンスは傾き衣類は散乱し、テレビは見事にひっくりかえっていた。「どうしたの?これは!」私は大声になった。「それが・・・昨夜地震があってね。気がついたらこうなっていてびっくりした!」淡々と言い訳し、自分の非を認めない父の態度に怒りが段々込み上げて来る。主人も何事だと部屋を見に来た。父は地震で大変だったと再び話す。「何が地震よ。じーさんがしたんでしょう、これ!」片付けをしながら口調は強くなる。ところが、主人は「大変だったんですねー」と言いながら元の位置に戻す。 痴呆の介護の模範となる対応の仕方である。私も対応を判っているがいざ事が起こると、どうしても感情的になってしまう。まだまだ修行が足りない。三月末になり、木の芽もすっかり出揃ったのか父の問題行動がピタッと治まった。何事もなく静かな日々が続くと、私も少々不安はあるが穏やかな気持ちで過ごせるから不思議だ。痴呆の人と同居といえば大変だと思われるが・・・行動パターンを知っていると介護は容易になる。先が見えない在宅介護でも、焦らず、慌てず、心にゆとりがあれば何とか一緒に暮らしていける気がします。
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