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介護体験談 「老人をかかえて」高知県支部版
「高知県家族の会だより」(2001年3月25日 No.119)より 桃の木高橋 昌利
家の庭に一本の桃の木がありました。7年前のことです。植えてもう10年程になっていました。私が日曜市で買ってきて植えたものですが、2、3年前から実をつけ始め、楽しみにしておりました。 その歳もたわわに実をつけて色づいてきておりました。 ある日の午後、同じ団地で近くに住む男性が突然、妻に「家に来てくれ」というのです。「何のことですか」と、私が聞くと、「お宅の奥さんが、中学1年の私の娘が桃を盗ったと言って、あらぬ疑いをかけ、娘が泣きながら帰ってきた。娘は盗っていないので、謝りにきてくれ」と言うのです。そして、妻を連れて行こうとします。 あまりにも意外なことで、ショックを受け、私も妻と一緒にその家まで行きました。妻は一言もしゃべりません。私自身は現場を見ておりませんので、妻は自分の見た本当のことを言ったのか、妄想なのか分からず、ただ謝るしかありませんでした。 なんとも後味の悪いことになってしまいましたが、それが後で思えば、妻の痴呆のはじまりの頃で、私もまだそれには気付いておりませんでした。後で、痴呆と分かってきたとき、その男性も、やっぱりそうだったかと思ったに違いありません。 そんなことがあって、すぐその桃の木は根こそぎ切ってしまいました。いつまでも忘れることのできない思い出です。
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