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介護体験談 「老人をかかえて」埼玉県支部版
「ふれあい」(2001年2月25日)より アルツハイマー病の夫と車の運転N. S.
平成10年10月にアルツハイマー病と診断された。夫は58歳。仕事を辞めた。私も一緒に辞めた。 日常は会社を辞めただけで身体が悪いわけではないので退職者夫婦の生活だった。 病名を告げられたとき、ドクターから「車の運転は止めてください」といわれた。だが夫は当然のように運転を続けた。何度も止めるように説得したが、その度に怒りで血圧が急上昇して夜間の救急外来診察の世話になることもあった。私も助手席に座って気をつけていればと、運転を止めさせることによって生じるトラブルを避けている状態だった。 11年10月、エンジンをかける動作がスムーズにいかないように見え始めていた。長女の家へ孫を送った帰りに、不安を感じ「私が運転しようか」と声をかけたら、夫は私の腕を振り払って運転席に座った。バイパスに出て、思わず「あーっ!」大きな声が出た。車が蛇行している!夫は全身硬直してハンドルを握っている。足を引っ張っても鉄のように硬い。対向車が目前に迫り、大きな衝撃を受けて車が止まった。 一瞬の間だったと思う。車は縁石に激突し、ガラスもボンネットも飛び散って、蒸気を吹き出し前部がペシャンコにつぶれていた。 あの光景は、今も私の脳裏に切り取った絵のように焼き付いている。 私がまちがっていた。仕事も辞めざるを得なかったので、せめて車ぐらいはまだ、と甘く考えていた。車を発進させるまでの一連の手の動きがあやふやになってきたかな、と感じ始めたときは車の運転はできない、ということなのだ。 車の運転をするかしないかは、アルツハイマー病では難しい判断といわれているが、初期のアルツハイマー病の患者には運転能力はなくなっているとはっきり認識させた方がよいと思う。 私たちの事故は自爆ですみ、人身事故にならなかったのが不幸中の幸いだった。 この事故直後に「夫は車の運転はしない」という約束で、20日後に同型の車を買いました。その後何回か、運転をしたいというトラブルはありましたが、現在はすっかり諦め、助手席が指定席になりました。 こう書いてきて、自分の矛盾に情けなくなります。車の事故から1年余も過ぎているのに介護保険や障害の認定に踏み切れません。介護は孤独な日々、大きな不安に潰されそうになりながらも、貴会の会報を心待ちにするようになりました」。つたない文章ですが、車の運転に悩んでいる方に、何かの慰めになればと思い書いてみました。
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